今日は題記の講演会にうちのオバはんと一緒に出席しました。安曇野市豊科図書館主催のチャレンジ講座で、講師は大町市立山岳博物館の館長、鈴木啓助氏です。鈴木氏は元信州大学教授で、気象特に雪に係る研究を長く携わっていて、今日は雪の降るメカニズムや日本独特の降雪についてのお話が聴けました。雪自体は珍しくはないのですが、雪が降るのは簡単ではなく特殊な条件が揃った時に降ることを初めて知りました。そして日本には豪雪地域がありますが、世界的に見てとても珍しく平地の積雪が4〜5mも積もるのはどうやら日本だけの現象のようです。雪の要因の一つであるシベリア寒気団ですが、シベリアではせいぜい積もっても1m足らずなのだそうです。そんなとても興味深いお話が1時間半も聴けて、楽しい講演会でした。
信州に越しておよそ10年、地球温暖化で降雪量が次第と減ってきていることを実感しているこの頃ですが、講演者からは心配のないことを伺いました。雪の降る現象は過去から歴然とした条件のもとに降っていて、特に高山ではその積雪量に時系列的な変化傾向はなく、これからも問題ないとのことでした。でも麓のスキー場がこの先どうなるか、自分としては心配事ではありますが、少し元気をもらった1日でした。




今般の直木賞候補作の一つである題記の本を読んだ。筆者の小説を読むのは2回目で、前回は2年前の直木賞候補作だった。今回も似たようなジャンルの内容で、サスペンスやミステリーとはちょっと違うハードボイルド的な推理小説だ。本の帯には「圧倒的実力を誇る著者が、ついに書き上げた大河ミステリー」とあり、6章立て約600ページの長編だ。幼馴染み5人組が還暦までに至る昭和、平成、令和の各章で殺人事件に絡み合いながら物語が進む凝った構成だ。主要な舞台は長野県上田市と松本市、ほんの通過点で安曇野市も出てきて、土地勘的には場所ばしょのイメージが湧いて面白かった。ただ、ストーリー展開は緻密ながら、ナルホドよくぞそこまでと驚嘆するようなサプライズはなく、辻つま合わせ的な強引さが目立った。合わせて、永井荷風、太宰治、中原中也などの文豪のフレーズが物語に脚色されていて、こじ付けがましく浮いた感じがした。暴力やイジメのシーンもグロテスクな表現が氾濫し閉口した。文芸的にもエンターテイメントのみに終始した感じで、読後の充実感はなかった。








今般の第165回芥川賞候補5作品の中で最後となる、題記の作が収録された雑誌を読んだ。読後に筆者名「りことみ」をネットで調べると、女性であること、そして中国語を母国語とする台湾人であることを初めて知った。それにしても何故、台湾人が日本の文学賞にノミネートされるのか訝しがったが、もうすでに日本での文筆活動で日本の小説家として知れ渡り、第162回の芥川賞候補にもなったことを知り、自分の知識のあさはかさを思い知った。内容は一言で言うと、言語を巡るファンタジー。中国語っぽい言葉、日本語っぽいことば、場所は何となく沖縄あたりが想像され、時代も今よりも先のようだ。それでもSFぽさは微塵もなく、不思議な世界をさまよう感じだ。芥川賞と言えば純文学志向で娯楽から最も縁遠い退屈な代物で、ストーリーも即興的で混沌としているものが多いとされている。が、本作はストーリーがしっかりしていて、結構、読み手を引きつける魅力を感じた。ただ期待して読み進めただけに、エンディングは淡白で物足りなかった。

