小山田浩子「穴」、中原清一郎「カノン」を読んで

文芸誌で話題の題記2冊を図書館の新刊コーナーで運よく見つけ、早速借りて読んだ。
「穴」は1983年広島県生まれの女流作家の小説で、本年1月に150回芥川賞を受賞した。平凡な日々をおくる主婦の淡々とした生活模様が途中から不可思議な出来事に切り替って現実の生々しさの中に怪談ものの様相を呈していく内容で、断片的な物語で終始している。結局、テーマや主張が見えずによく解らない小説だった。
20140512「カノン」はペンネームを二つ持つジャーナリスト兼作家の作品で、学生時代に別ペンネームで文壇デビューして以来30数年振りに執筆したもののようだ。文芸誌、書評には “身が震えるほど感動的な新生ドラマ”とあり、読みはじめたところスリリングな展開に身の毛がよだち一昼夜にして読み終えた。近未来を想定した生体・脳間(海馬)移植をテーマに家族愛や生命の尊厳を捉えたSF的実験小説の類いだ。設定はあまりに現実離れしたものだが、緻密に組み立てられたストーリが読み手を釘付けにし最終章は目もくらむほどの展開で感動ものだった。ここ1年での読書を通じ、1番のお勧め本だ。

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