垣根涼介「極楽征夷大将軍」を読んで

今年7月に受賞した直木賞2作品で先月に引き続き、題記の二つ目を読んだ。上下2段組の549頁に亘る大作で、読破に2週間近くを要した。足利幕府を立ち上げた足利兄弟と側近の高師直(もろなお)の苦闘を描いている。主だった登場人物は百人では収まらず、人物名も似た名が多く呼称もそれぞれあって誰が誰やら理解に苦しんだ。史実に基づいた歴史書を彷彿させる内容だが、足利尊氏の弟の直義と師直の二人がそれぞれの視点で物語っている。鎌倉幕府の地を直接壊滅させたのは新田義貞の記憶はあったが、どう足利時代が到来したのかうる覚えで、本書を通して実体を垣間見れた。意外に感じた幾つかとして、
鎌倉幕府が滅んだ後も日本全国の各地で戦乱が絶えず、十万を超す大きな戦が何度も繰り返された。
合戦の多くは紙一重の差でしかなく、蜂起する軍団が当初は数百騎であっても時の気運で数万の軍勢にもなった。
尊氏は征夷大将軍になったが実権を振るわず、鎌倉幕府のような執権が統治していて、その権力争いが絶えなかった。
南北朝と幕府との関係やその推移が複雑ながら、頭の中で整理できた。

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