先月発表の第175回直木賞受賞作である題記の本を読んだ。筆者としては今回、3度目の直木賞ノミネート作。たまたま過去の2作も読んでおり自分の読後感想を見ると、1作目の「平場の月」は『しみじみと心に響く良質な本』と絶賛し、2作目の「よむよむかたる」は『読破にやたら時間を要した感が否めず苦手な部類の本』と記していた。同じ筆者ながら評価が分かれたが、今回の本はその中間的な立ち位置だった。ジャンルは歴史や伝記とは関係のない時代小説で、現代でも今だ問題視される女性蔑視をアンチテーゼにした作風だ。天然痘のあばたが醜く残り容姿ランクが「圏外(けんがい)」の女性が、したたかに生き延びつつ大成していく物語で、随所に出産に関わる命の尊厳や女性ならではの生理的側面が色濃く描かれている。江戸時代、はぐれ者たちが徐々に集結して療養所の一大拠点を築いていくストーリー展開は斬新で面白いが、全般を通し筆者の思い入れが強く主張し過ぎていて、堅苦しく・読みにくく・そしてエンタメ性に欠けた感がした。
