東田保久「銀閣寺道」を読んで

昨日、高校時代の友人から題記の本の贈り物が届いた。今年の年賀状に本を出版したとの連絡があり、てっきり自主出版の類かと思っていた。が、贈り物の本の装丁が立派なので、もしやとAmazonで調べると本格的な本作りをした大手の出版書物でネット通販もしていて、自主出版など勝手な想像をしたことを恥じた。友人は京大建築学科出身のエンジニアで、大手建設会社の経営幹部でもあった。その人がなぜ本を、と読み解きはじめると一気にハマって1日にして読了した。自身の大学時代を回顧した連作3編の短編集で、構成がよく読みやすい。いつもの書評と違って、作家ではない友人として身内を見るような目線で文章を追った。でも驚いた。文章が卓越していて、ムダがない。説明不足ではなく、かといって冗長性もない私にとって丁度良い波長だ。第1遍を読みはじめて、複数回訪問した友人の下宿の佇まいが55年越しに甦り息を呑んだ。そして本のストーリがどこまで真実で、どこからフィクションなのか想いを奔らせた。友人との長い付き合いなのに、本が語るまるで知らぬストーリ展開に圧倒されてその新鮮味と臨場感をひしひしと感じた。本の帯には「自立を求めて奮闘する青年の心の軌跡と交錯する人々の運命」とあり、自分にもこの歳にしてかつての青春を顧みた1日だった。

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